札幌地方裁判所 昭和44年(ワ)1034号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕一、被告金子砂利の責任
被告金子砂利が、昭和四四年四月二七日、被告辻建材から加害者を運転手付きで賃借したことは当事者間に争いのないところ、証人高木唯雄の証言および被告辻建材代表者・被告金子砂利代表者各本人尋問の結果を総合すると次のような事実が認められる。
すなわち、被告原田工業は、被告北海道から請負つた真駒内団地内の道路補修工事(以下、「本件工事」という。)に使用するため、被告金子砂利に対し、運転手付きのブルトーザー一台を一日か二日間だけ賃借したい旨申入れたが、当時、被告金子砂利には空いているブルトーザーがなかつたため、被告金子砂利が、同業者である被告辻建材から一たん借り入れた上で被告原田工業に転貸することとし、一時間当りの賃料三、〇〇〇円期間は一日か二日との約定で被告金子砂利が前記のとおり賃借し、同日、同様の条件で被告原田工業に転貸し、被告原田工業は本件事故当日これを利用して本件工事を行つていた。このような加害車の賃貸関係は、当時、被告辻建材と被告原田工業との間に取引関係がなかつたために、被告金子砂利が中に入り被告辻建材に対する関係で賃借人となつたものであつて、実質的には被告金子砂利は面識のない被告辻建材と被告原田工業の単なる仲介役として橋渡しの任をとつたにすぎないものである。
以上のとおり認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。また、原告らは、被告金子砂利が被告原田工業から本件工事を下請した旨主張するが、本件全証拠によるもこれを認めることはできない。
以上に認定した諸事情のもとにおいては、加害車の運行による利益と運行に対する支配が被告金子砂利に帰属していたものとは認め難く、他にこれを認めるに足る証拠のない本件においては、被告金子砂利には運行供用者責任はないものというほかない。
二、被告北海道の責任
1 運行供用者責任
被告北海道が本件工事を被告原田工業に請負わせたことは当事者間に争いがないところ、すでに認定したように、被告原田工業が賃借した運転手付き加害車を使用して本件工事を行つていた際、本件事故となつたものである。ところで、原告らは、被告北海道の運行供用者責任を主張するが、本件全証拠によつても被告北海道が本件工事の注文者であるという以上に、具体的に加害車の運行に関し運行利益ないし運行支配を有していたと認めるに足る証拠はない。従つて、この点に関する原告らの主張は理由がない。
2 営造物責任
次に、原告らは、本件道路の管理に瑕疵があつたとして被告北海道の国家賠償法二条による責任を主張するので判断するに、被告北海道が本件道路を管理していること、本件工事に際し本件道路に危険予防のための「繩」あるいは「柵」の設置がなかつたことは当事者間に争いがないところ、成立に争いのない甲第六号証、検証の結果、証人桜庭秀助、同木村正明の各証言を総合すると次の事実が認められる。
被告北海道が管理している本件道路は、真駒内団地F一号棟とF2号棟の北側軒下部に設けられ、各戸の入口に通じる幅員約2.6メートルの土砂が踏みかためられた東西に走る同団地内の通路であるが、本件工事は、団地内(全長約三〇〇メートル、幅約八〇メートルの広さ)の本件道路を含む数ケ所の道路の路床が高く、そのため住宅の物置に水が入るため、路床を約一〇ないし二〇センチメートル程度削ることを内容とするもので、F団地二四棟のうち約二〇棟の前路上を対象とするものであつた。工事はブルトーザーが予定現場を順次移動して堀削してまわれば足る程度のもので、一日か二日で終了する予定のものであつた。また、本件工事施行の通知については、昭和四四年四月一二日ごろ、北海道公営住宅専任管理人である桜庭秀助がF団地自治会々長に対し口頭でなし団地住民への連絡を依頼したが、具体的な工事の日時は通知していなかつた。なお、本件工事に際しては被告原田工業がその係員を派遣して加害車の誘導ならびに作業の指示監督をなしていたものである。
以上のとおり認められ、他に右認定を左右するに足る証拠はない。
そこで、被告北海道に本件道路の管理の瑕疵があつたか否かを考えるに、すでに認定したように本件工事は路床を若干堀削するだけの簡単なもので、ブルトーザーの移動に伴い工事現場も移動するものであつて本件道路における工事もそれ程時間のかかるものではなかつたこと、ブルトーザーを誘導する係員も配置されていた(後記認定のとおり、本件事故はその誘導者が暫時現場を離れた間に発生したものである。)こと等に鑑みると、本件道路には工事に際し「繩」あるいは「柵」などの設置がなく、また、団地住民に対する工事についての事前通知が十分ではなかつたということだけをもつて、本件道路の管理に瑕疵があつたということはできず、他にこれを認めるに足る証拠はない。従つて、この点に関する原告らの主張は理由がない。
(惣脇春雄 村上敬一 佐藤久夫)